第79章 泥棒猫

岡山真司はほどなくして中から出てきた。

不意の足音に、佐伯薫はびくりと肩を震わせる。右手が机の上の液体に当たり――

「バンッ」

ガラスが砕け、破片が床いっぱいに散った。

佐伯薫は呆然と床を見つめた。

さっきまでのあれこれは、確かに彼女の計算だった。けれど、これは本当に事故だ。

岡山真司はただ目を上げ、淡々と一瞥をくれるだけ。そこに感情はない。責める色もない。

そして静かに言った。

「片づけて。続けて」

叱りもしない。追いもしない。

その「何もない」扱いこそ、罵倒より人をすり潰す。

佐伯薫は割れた破片を握りしめた。指先に刺さって血が滲んでも、痛みすら感じない。

視線の先...

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